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学術情報・動画 お役立ち記事 歯科コラム 歯科開業のリアル〜開業資金の相場と資金調達のポイント

歯科開業のリアル〜開業資金の相場と資金調達のポイント

1.歯科開業資金の内訳:必要なコストを理解する


開業資金を考える上でビルやショッピングモールなどの賃貸物件を借りて開業する「テナント開業」と、土地を借りるか購入してそこに建物を新たに建てる「建築開業」とでは必要資金に大きな差があります。その上で「テナント開業」は総額8,000万円〜1億円が必要資金の相場となり、「建築開業」では(土地を除いて)総額1億円〜1.5億円が必要資金の相場となります。以下に内訳とポイントを説明します。


【テナント開業と建築開業それぞれの場合の費用】


■テナント開業の場合


①入居保証金・敷金:月額家賃の2〜12ヶ月分

テナントを借りるにあたってそのテナントのオーナーに支払うお金です。月額家賃の2〜12ヶ月分となっており、ビルのグレードや地域による差が大きいです。


②内装工事費:坪単価70万〜120万円

借りたテナントの内装工事が必要となります。内装工事は使用部材などでも異なりますが、坪単価70万〜120万円が目安となります。例えば30坪のテナントを借りた場合、坪単価100万円とすると3,000万円が内装工事費となります。


■建築開業の場合


①土地購入費あるいは借地権利権

購入するにしろ借りるにしろ、建物を建てる上でまず土地を確保しなければなりません。費用は土地価格によって大きく変動してしまうので明確な目安は提示することはできませんが、そのエリアにおける他の土地の価格(坪単価)をいくつか調査し、その価格とかけ離れていないかを確認しましょう。


②設計監理料:建築価格の10〜15%

建物を建てるには開業される歯科医師の先生が考える理想の歯科医院を設計士に伝えて建ててもらうことになります。また、図面通りに建物が建っているかを建築期間中にチェックしてもらうため、設計管理料として建築価格の10〜15%を支払うことになります。


③診療所建築費:4,000万円〜6,000万円

診療所自体の建築費です。当然、構造や建坪などで変わってきますが、目安としては4,000万円〜6,000万円で考えておくとよいでしょう。注意点として、門扉やブロック塀、敷地内の駐車場におけるアスファルトなど建物以外の工事となる外構工事の予算を計上し忘れないようにしましょう。


④住居部分建築費:1,500万円〜2,500万円

歯科医院を住居併用で建築することを考える先生もいらっしゃいますが、その場合住居部分は事業ではないため、診療所とは別に予算を考える必要があります。1,500万円〜2,500万円をみておけば大丈夫です。



【その他の費用:3,600万円〜8,000万円】


診療場所としての費用以外には以下のようなものがあります。


■医療機器・材料購入費:2,000万円〜5,000万円


診察室や待合室の設備、診療に必要な器具や材料の費用が含まれます。具体的には診療ユニット、バキュームシステム、エアコンプレッサー、滅菌器、レントゲン設備、レセコンなどです。最近は感染予防の観点でより多くの設備を導入する傾向にあり予算が膨らむ傾向にあります。選択する機種や必要台数によって大幅に金額が変わるので、開業時にそれが本当に必要なのか、開業後に経営が軌道に乗ってから導入する等、慎重に検討することをおすすめします。

例えば、建築開業で4ユニット分のスペースを確保しておきつつ、初期は3ユニットのみ設置し、開業後に患者が増えてきてから1ユニット分増設することを考えても良いです。

材料に関しても物件費用などに比べて少額なため、どうしても金銭感覚が甘くなってしまいがちですが今後の歯科医院の診療で「今」必要なものかどうかを見極めて細かくチェックしていくと良いでしょう。


■運転資金:1,200万円〜2,000万円


人件費や光熱費、物品購入費など、日々の運営に必要な資金です。一般的には1,200万円程度が必要と言われています。開業してすぐ患者が来たとしても保険診療の収入は2ヶ月遅れて入金されるため、開業後の月額経費を見積もってみて、最低でも4ヶ月分は確保しましょう。

なお、人件費ですが、歯科衛生士不足の昨今で人材確保は難しくなってきています。雇用してもすぐに退職してしまうことがないように、採用する人材にはしっかりと開業後の歯科医院の話をして不安を取り除いていくことが重要です。


■開業時の広告宣伝費:200万円〜300万円


開業時の告知や広告に必要な費用です。内覧会の開催やそのための告知、HP作成など、歯科医院がスタートダッシュするために大変重要な項目です。例えば、内覧会は開業する地域の方々に直接挨拶できる貴重な機会です。ご存じのとおり、医療機関の集患は地域の方々の口コミの影響が大きく、地域住民にも良い印象を持ってもらうためにもスタッフに任せるのではなく院長が積極的に顔を出していきましょう。

患者さんに一度でも来院してもらわないことには始まりません。駅前立地だから大丈夫だろうと楽観視せずに開業後の医院経営を軌道に乗せるためにも、予算は十分に確保するとともに自分がしっかりと関与していきましょう。


■歯科医師会入会金:150万円〜600万円


日本歯科医師会、都道府県歯科医師会、都市区歯科医師会の3団体すべてに加入するための費用であり、金額は地域や会員種別によって異なります。歯科医院を開業・経営すると勤務医時代よりもさらに地域の情報収集などをしていく必要があります。

最近は歯科医師会の加入率が下がっているとも言われていますが、歯科医師会加入は医師として不可欠なスキルアップや情報収集の面で加入していることはメリットとなります。


■予備的な資金:50万円〜100万円


想定外の出費に備えて設けるべき予備資金です。予算をカツカツで開業した場合、日々の資金繰りが気になってしまい、目先の診療報酬にとらわれてしまい余裕を持った診療ができなくなってきます。何かあった際の余裕資金として手持ちの現預金として別枠で確保しておくことをお勧めします。



2.開業準備にあたっての資金調達について


必要とする設備の多さや施設内の造作などを必要とするため歯科医院の開業はその他の診療科目の医療機関と比べても必要資金が多い傾向にあります。そして資金の目安を知ると、あまりにも高額なため開業に躊躇される先生は多いです。しかしながら、今開業されている歯科医の多くの先生は、自己資金が十分でもない中で開業し成功されている方々ですのでご安心ください。以下に資金調達手段とその際のポイントを説明します。


【自己資金】


金融機関から借入をするにしても自己資金ゼロで借入できることはほぼありません。金融機関としてもお金を貸す以上、その人が開業に向けて準備をしてきた人かも見られます。その意味でも最低でも1,000万円は自己資金として準備することが望ましいです。


【金融機関からの融資】


多くの先生が資金調達手段として頼ることになるのが金融機関からの借り入れとなります。日本政策金融公庫が提供している無担保・無保証の新創業融資制度を利用したり、地銀を活用したり地域によって異なりますが金融機関に支援を求める金融機関に対しては開業する歯科医院の返済能力が如何に高いかを説明しましょう。

そして、その歯科医院が成功すると説明する資料が事業計画書となります。自由診療の割合や予定従業員数、個人での借入状況など多くの要素で判断されるので夢を感じさせる資料になっていることが重要です。

今成功している先生の中には、自分がいかに優れた歯科医師か、どういう道筋で歯科医院を成功に導くか、を独自の資料でまとめて銀行に提出された方もいます。事業計画は調達時だけでなく、自分が今後経営する上での羅針盤ともなりますので、開業を考え始めたら少しずつ作成していくとよいでしょう。


【補助金・助成金】


ものづくり補助金やIT導入補助金など、公的機関はさまざまな補助金・助成金の制度を提供しています。注意点としては申請から審査、決定までに時間がかかることが多く、審査を通って決定したとしても入金がだいぶ先になることが一般的なことです。また、その開業費用に対しては少額であることが多いため、開業費用の補助的なものとして捉えたほうが良いでしょう。

申請時に必要な資料としては開業時に作成する事業計画書など一部重複するものも多く、折角存在している制度であればこのタイミングで利用しない手はありませんので申請できるかを積極的に検討していきましょう。


【親族からの資金調達】


先生の中には親族から資金を調達する場合もあるかと思います。単純な金銭の譲渡としてしまうと贈与税が発生しますので、親族からは譲渡ではなく借入とすることも検討するなどよく検討された方が良いです。

また、親族から借入している場合に税務調査でよく契約書(金銭消費貸借契約書)の有無を聞かれます。契約書の存在だけでなく、その中身も見られるのですが金利と返済期間などはしっかりと適正な設定をしておき、その通りに運用しておくことが必要となります。



3.最後に


今回は開業にかかる大まかな資金とその内訳をご説明しました。上記はあくまで目安ですので、立地や目指している歯科医院像など個別の事情によって必要資金は大きく変わります。ただし、今まで歯科医院の開業を支援していて1つ言えるのは自分がどういう歯科医院を開業したいか、そのためにどのくらいのお金が必要かを考えることは現在の勤務歯科医としてのキャリアにも良い影響を与えるということです。


開業にかかるお金の大体の金額と内訳がわかったならば、あとは自分が目指したい歯科医院はどういう歯科医院か。地域密着型の歯科医院なのか、都市型の自費主体の歯科医院なのか、外来だけでなく訪問歯科でも医療を提供していく歯科医院なのか等、目指す姿は様々です。


弊社では全国の様々な形態の歯科医院の開業とその後の経営を100年以上ご支援してきた実績がありますので、個別の事情を把握した上でのアドバイスが可能です。歯科医院の開業にあたって個別で相談してみたい方は無料で承っておりますので是非ご連絡ください。


(本記事は2024年4月1日時点の記事です)


監修:株式会社ヨシダ 開業支援担当




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